映画『ニンフォマニアックVol.1』のネタバレあらすじ・徹底考察【欲望と搾取の狭間で】

ニンフォマニアックvol.1

『ニンフォマニアック』は2013年に公開されたデンマークの映画です。
監督は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ハウス・ジャック・ビルト」などのラース・フォン・トリアー。

鬱々おじさんこと鬱の申し子ラースの、「アンチクライスト」「メランコリア」に続く”鬱三部作”の完結編が本作『ニンフォマニアック』です。

直訳すると”色情狂”。

主人公の”色情狂”ジョーの一代記である本作は、現在のジョーがこれまでの人生を、初対面の孤独なおじさんに語って聞かせる造りになっています。

現在のジョーを「アンチクライスト」「メランコリア」に続いてシャルロット・ゲンズブールが、青年期のジョーを本作がスクリーンデビューであるステイシー・マーティンが、孤独なおじさんセリグマンを「ドラゴン・タトゥーの女」のステラン・スカルスガルドが演じました。

いやー、やばいんですよ、トリアー家。

ラースの甥のヨアキムも映画監督なんですけど、「テルマ」って作品なんてもう鬱すぎて心配になっちゃいます。

トリアー家が心配ですよ本当、どうなってんだか。

さてさて、本作『ニンフォマニアック』は240分ありますので、vol.1と2に分かれています。

今回はボリューム1について徹底考察してまいります!(どうやらこの作品、キリスト教と深く深ーく関係しているようなので、その辺ご興味ある方は調べてみてください。ほへー!!って思います。私はバカなのでその辺無視して行きますよ!)

映画『ニンフォマニアックVol.1』あらすじ・考察

雪の夜、セリグマンという男が買い物から帰る途中、道端に傷だらけで倒れている女がいました。

女は警察も病院も拒否し、セリグマンの家で温かいお茶が飲みたいと言います。

家に女を連れて帰り、着替えを与えベッドに寝かせると、女は今までの人生についてぽそぽそと語り始めました。

「私は悪い人間なの」

女はジョーと名乗りました。

映画『ニンフォマニアックVol.1』第1章・釣魚大全

女には”B“という幼なじみの女の子がいました。

女とBはいつも一緒。

女は医者である父が大好きでした。

その想いは親子の愛をはみ出し、それゆえ母を嫌います。

母は一度も女を愛してはくれませんでした。

女は幼くして性器の快感に目覚め、”感覚”と呼び刺激し続けます。

父は女に木や草の話をするのが好きでした。

女は父とふたりで居たいので、木や草の質問を何度も繰り返します。

15歳になった女は近所の男”J“を相手に、適当に処女を捨てました。

いきなり膣と尻に挿入され、痛みしか感じなかった女は「一生セックスなどしない」と誓い、よろよろと家路に着きます。

しかしその誓いは長くは続きませんでした。

Bの思いつきで、キャンディの詰め合わせを賭けて電車で男を”釣り”、その数を競う遊びをします。

男は誰しも目を見て微笑めば簡単に釣れ、女は勝利してキャンディを頬張りました。

「ひどいことをしたものだ」と過去を嘆く女は、セリグマンに叱責されたくてたまりません。

誰でもいいから怒ってほしい。

他人の怒りを買うことでしか自分の存在を感じられないまでに女は孤独でした。

しかしセリグマンは決して怒りません。

女の話に”優しく“耳を傾けるばかり。

女はジョーと名乗りました。

セリグマンはユダヤ人ですが、ユダヤ教を信じていません。

唯一の後ろ楯を信じていないのですから、孤独でした。

孤独な二人は一見寄り添い始めたように見えますが、決して寄り添うことはありません。

この二人には決定的に”愛”が無いのです。

なので興味や思いやりのフリは出来ようが、そこに実感が伴っていないのです。

孤独がもたらす悲劇でした。

映画『ニンフォマニアックVol.1』第2章・ジェローム

相変わらず手当たり次第、男と関係を持つジョー。

ある日突然、Bが真実の愛を知るところとなり、ジョーは独りぼっちになってしまいます。

友人を失い”暇”になったジョーは適当な職探しを始めました。

そんな中、秘書職の面接に行った会社の社長がなんと偶然、処女を捧げた”J”だったのです。

Jの名はジェロームといいました。

ジェロームは家族が経営しているこの会社で、お気楽に雇われ社長をしています。

何かと高圧的なジェロームにムカついたジョーは、会社中の男と関係を持ちました。

それでもジェロームは怒りません。

ジョーは怒られたくてたまりませんから、ジェロームに執着していきます。

その執着を”愛”と脳内で書き換えたジョーはさながら恋する乙女。

しかし恋する乙女を前に、ジェロームはさっさと結婚して消えてしまいました。

傷付いたジョーはことさらに男を漁りまくります。

映画『ニンフォマニアックVol.1』第3章・ミセスH

ジョーの周りに男は山ほどいましたが、誰一人にも興味はありませんでした。

つまりジョーにとっては、肉の固まりにすぎないのです。

たまに相手の妻なんかにバレて修羅場のようなことになったりしますが、ジョーは動じすらしません。

はなっからクソほども興味がないのです。

ジョーにはほとんど全ての罪悪感が備わっていませんでした。

ジョーにとってセックスは搾取ではなく欲望。

ジョーはセックス中に限ってのみパワーを得ます。

自分がこれを求めているという”自信”があるから。

逆に言えばそれ以外の時間は全ての自信を喪失し、孤独の中で無意識に他人の慈しみを求め、結果的に搾取されているのです。

ジョーが搾取から解放されるのは、セックスの最中だけなのでした。

映画『ニンフォマニアックVol.1』第4章・せん妄

そんな中、大好きな父が重い病気で入院してしまいます。

機能不全の家族で育ったジョーは、成人してもなお父に対して適切な愛情を持つことができません。

まるで恋人のように看病します。

しかし父は母に依存しており、せん妄状態で母の名ばかりを叫びました。

これ以上ない孤独に苛まれるジョー。

耐えきれず病院の空きベッドでそこらの男と関係を持ちました。

この頃からジョーは、孤独に気付いてしまいそうな自分が手に負えず、セックスに”逃げる”ようになっていきます。

ついに死んでしまった父の寝顔を眺めながら、ジョーは濡れていました。

セリグマンはジョーの話を聞きながら、文学や数式や宗教を引き合いに出してジョーを慰め続けます。

それらの慰めに実感が伴っていないのは、セリグマンの経験の乏しさでしょう。

慰めの皮を被りながら、自らの知識をひけらかすセリグマンは、無意識のうちにジョーを見下しています。

「このアバズレが」と。

映画『ニンフォマニアックVol.1』第5章・リトルオルガンスクール

父が死んだ頃、ジョーは毎晩7,8人の男とセックスしていました。

その中でも”お気に入り”が2人。

F“は単調で安全で儀式的。

ジョーを尊重してくれる優しい人物です。

彼をオルガンでいうところの低声部としましょう。

G“はセックスをとことん愉しむ男。

焦らして焦らして、ライオンやジャガーのようにジョーに噛みつきます。

彼を高声部とします。

その頃偶然にジェロームと再会を果たしたジョー。

ジョーはすぐにジェロームに飛びつき、二人は恋愛の関係に。

ジェロームが、ジョーの心のオルガンでいうところの定旋律でした。

「セックスの一番の媚薬は”愛”だ」とBに教わっていたジョー。

しかし、ジェロームとのセックスを重ねていたある日突然、性器の感覚が全く無くなってしまったのです・・。

映画『ニンフォマニアックVol.1』考察:まとめ

ジョーの一人語りによる一代記。

それは独りよがりで孤独なものですが、ジョーは現実を見ないようにしていますから、さらにたちが悪い。

頼みの綱のセリグマンも怒るどころか優しく振る舞ってみせるばかりで、ジョーの思い通りにはなりません。

何故、ジョーは道端に放られていたのか。

何故、セリグマンはジョーを慰め続けるのか。

ジョーの波乱の人生は後半へと続きます。

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